子宮体部の内膜に発生する

 

 


子宮体がんは、子宮体部の内面をおおう内膜という組織に発生するがんです。
以前は、体がんは比較的めずらしく、子宮がん全体の五%ほどしかなかったのですが、じわじわと増え続け、最近では子宮がん全体の三五%を占めるようになりました。では、体がんはどのようなしくみで発生するのでしょうか?
体がんが発生する子宮内膜は、女性の性周期にしたがって厚くなり、排卵が起こっても受精しなければ、月経となってはがれ落ちる組織です。ですから、月経が規則正しく、正常にくり返されていれば、内膜にがん化が起きかけても、月経とともに体外に流れ出てしまい、がんに進展することはほとんどありません。毎月、排卵を伴って正常に月経があれば、体がんの心配はまずないのです。


ところが、卵巣のはたらきがわるかったり、閉経が近くなると、正常な排卵が起こらなくなります。排卵がなければ、内膜細胞の増殖を抑えるプロゲステロンが分泌されません。月経もきちんとこなくなります。
一方、子宮内膜を増殖させるエストロゲンは、完全に閉経しない限り、排卵がなくても分泌されます。このようなとき子宮内膜は増殖を続け、子宮内膜増殖症という病気になることがあります。この子宮内膜増殖症は、完全に閉経するとおさまることが多いのですが、ときに子宮内膜異型増殖症と呼ばれる状態に変化します。そして子宮内膜異型増殖症の一一○~二五%が体がんへと進行するのです。
体がんの七~八割は、この内膜増殖症を経由して発生し、四十代、五十代にみられる体がんの多くがこのタイプです。しかし一一~三割の体がんは、排卵やホルモンの状態とは無関係に発生します。六十歳以上で、このタイ
プのがんがよくみられます。どちらのタイプの体がんも、ほとんどすべて腺がんで、頚がんに多い一局平上皮がんは非常にまれです。
体がんになりやすいのは次のような人です。
①更年期以降②月経不順、排卵障害がある③妊娠や出産の経験がない ④肥満⑤更年期障害の治療にエストロゲンを単独で用いている ⑥乳がんの手術後ホルモン剤を服用している⑦エストロゲンをつくる腫傷がある。
体がんの発生にはエストロゲンが大きくかかわっていて、子宮内膜増殖症から体がんに進展する可能性があります。このとき重要なのがプロゲステロンの作用です。

ロンが十分にあれば、いくらエストロゲンがあっても、体がんは起こりにくくなるのです。
更年期には一見月経があるようにみえても排卵が起こっていないことが多く、十分なプロゲステロンが分泌されません。ですから、この年代に体がんが発生しやすいのです。
更年期障害の治療でも、エストロゲンプロゲステロンを併用すれば、体がんになりにくいことがわかっています。また、若いときにエストロゲンプロゲステロンを周期的に内服するピルを使っていた人は体がんになりにくいこともわかっています。
②についても同様に、プロゲステロンが分泌されないために子宮内膜が過剰に増殖することが原因です。体がんと診断されるのは更年期から五十代にかけての人が多いのですが、排卵障害を伴う不妊症の人には一一一十代でも発生することがあります。
妊娠すると、大量のプロゲステロンが黄体や胎盤から分泌されます。ですから、何度も妊娠・出産を経験した人は体がんになりにくく、逆に妊娠したことがない人の子宮は、プロゲステロンの量とさらされる期間が少ないために、体がんになりやすいといえます。